工程管理研究所

- 業務改善
- 2025.4.7
直接費と間接費の違いとは?間接費を削減するステップも解説!
企業が利益を確保し、持続的に成長するためには、適切なコスト管理が不可欠です。製品の製造にかかる費用は「直接費」と「間接費」に分かれ、それぞれ異なる特性を持ちます。
本記事では、直接費と間接費の違いをわかりやすく解説し、間接費削減の具体的なステップや活用できるツールを詳しく紹介します。効果的にコスト削減を進めたい企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
直接費と間接費の違い
製品の製造にはさまざまなコストが発生しますが、これらは「直接費」と「間接費」に分類されます。
直接費は、特定の製品の製造に直接かかった費用を指し、原材料費や製造作業を行う従業員の人件費などが含まれます。
一方、間接費は、製品の製造には関わっているものの、特定の製品に直接紐づけることが難しい費用を指します。例えば、工場の光熱費や管理部門の人件費などが該当します。
直接費とは
直接費とは、特定の製品の製造に直接かかった費用を指します。一般的に、以下の3つのカテゴリに分類されます。
- 直接材料費:製品の製造に使用する素材や部品の費用
- 直接労務費:製品の製造作業に従事する従業員の人件費
- 直接経費:製品の製造に関連するその他の経費
直接費は、製品の原価計算において最も基本的な要素であり、正確に把握することでコスト管理の精度を向上させることができます。
直接材料費
直接材料費とは、製品の製造に必要な素材や部品にかかる費用です。製品そのものを構成する主要な原材料や、製造過程で組み込まれる部品などが該当します。
具体的な例は以下の通りです。
- 木材(家具や建材の製造に使用)
- 鉄鋼やプラスチック(機械部品や電子機器の製造に使用)
- 購入したネジや金具(組み立てに使用)
また、直接材料費は、以下の2つの区分に分かれます。
- 直接材料主費:製品の主要な原料や部品の購入費用
例:鉄鋼、プラスチック、電子部品、木材 など - 材料副費:原材料を仕入れる際に発生する付帯費用
例:輸送保険、引取運賃、関税 など
これらのコストは、製品ごとに正確に割り振る必要があります。
直接労務費
直接労務費とは、製品の製造作業に従事する従業員の人件費を指します。具体的には、製造ラインの作業員や技術者の給与、残業代、賞与などが含まれます。
具体的な例は以下の通りです。
- 製造ラインのオペレーターの給与
- 加工職人の人件費
- 生産部門の残業手当
また、直接労務費は直接加工費の一部として扱われ、さらに以下の2つの区分に分かれます。
- 社内加工費:自社の工場での製造・加工にかかる費用
直接労務費(作業員の給与、手当など)
機械稼働費(設備の維持費、電力消費コストなど) - 外注加工費:外部の企業に製造や加工を委託した際の費用
外注発注金額(外注先への支払い)
外注加工費は、加工費として計上する場合もあれば、材料費として分類されることもあります。明確に分類できないケースもあるため、適宜見直しが必要です。
直接経費
直接経費とは、製品の製造に直接関連しながらも、材料費や労務費に含まれない経費を指します。特定の製品の製造にかかった費用であり、個別に割り振ることが可能です。
具体的な例は以下の通りです。
- 製造設備の特定製品向けレンタル費
- 特定製品の試作・検査費用
- 特許使用料(特定の製品の製造に関連するもの)
直接経費は、他の直接費と同様に、製品ごとに明確に割り振ることが求められます。
間接費とは
間接費とは、製品の製造にかかるものの、特定の製品に直接結びつかない費用を指します。企業全体の運営や製造活動を支えるために必要ですが、直接費とは異なり、個々の製品単位で明確に算出するのが難しい点が特徴です。
間接費は、以下の3つのカテゴリに分類されます。
- 間接材料費:製品の製造には必要だが、直接製品の一部にはならない材料費
- 間接労務費:製品の製造に直接関わらない従業員にかかる人件費
- 間接経費:製造に伴う光熱費や設備の減価償却費など
間接材料費
間接材料費とは、製品本体にはならないものの、製造工程で必要となる材料費です。例えば、機械の潤滑油や塗料、作業用工具などが該当します。
具体的な例は以下の通りです。
- 塗料(家具や自動車などの仕上げに使用)
- 機械油(製造設備の動作を円滑にするために使用)
- ニッパーやレンチなどの工具(製造作業の補助として使用)
これらは製品の製造を支える重要な要素ですが、特定の製品単位で使用量を正確に割り出すのが難しいため、間接費として扱われます。
間接労務費
間接労務費とは、製品の製造に直接関与しない従業員に支払われる人件費を指します。生産ラインで作業する従業員の給与は直接労務費に該当しますが、間接部門の従業員の給与や福利厚生費は間接労務費となります。
具体的な例は以下の通りです。
- 工場管理者の給与(生産工程の監督・管理を行うが、直接製造作業はしない)
- 品質管理部門の人件費(製品の検査や基準設定を担当)
- 人事・経理・総務などの管理部門の給与
- 従業員の賞与や福利厚生費(社会保険料、退職金、研修費など)
間接労務費は、製造の効率や品質に関わる重要なコストですが、直接製造に関わる労務費とは異なり、特定の製品に直接紐づけることはできません。
間接経費
間接経費とは、製品の製造に関わるものの、直接的に結びつけられない経費を指します。工場の設備維持費や電気代、オフィスの通信費などが含まれます。
具体的な例は以下の通りです。
- 設備の減価償却費(製造設備・機械の購入費を長期的に分割計上)
- パソコンや製造機器の修理費(生産設備やオフィス機器のメンテナンス費用)
- 水道光熱費(工場やオフィスの電気代・水道代)
- 通信費(電話代、インターネット利用料)
- 事務消耗品費(コピー用紙、プリンタインクなど)
間接経費は、適切に管理しないと無駄が発生しやすいため、原価管理システムなどを活用し、適切なコスト削減を行うことが重要です。
費用削減は間接コストをターゲットに
企業がコスト削減を進める際、直接費の削減には慎重な判断が求められます。直接費を削減すると、製品の品質(Q:Quality)、コスト(C:Cost)、納期(D:Delivery)、いわゆるQCDに悪影響を及ぼす可能性が高いためです。
例えば、安価な原材料に変更すると品質が低下し、クレームや返品が増える恐れがあります。また、人件費を削減すると作業効率が低下し、生産性に悪影響を及ぼすことも考えられます。
一方、間接費の削減は、製品のQCDへの影響が比較的少なく、効果的なコストカットが可能です。
具体的な施策としては、以下のような取り組みが挙げられます。
- オフィスのペーパーレス化による印刷コストの削減
- エネルギー消費の最適化による光熱費の削減
- 間接部門の業務効率化による人件費の抑制
ただし、間接費はさまざまな部門に分散しているため、適切な原価管理がなければ削減すべきコストを特定することが困難です。そのため、まずはコストの可視化が重要になります。
原価管理システムを活用し、無駄を明確にすることで、より効果的なコスト削減が実現できます。
間接費を削減するステップ
間接費を削減するには、場当たり的にコストを削るのではなく、計画的なプロセスに基づいて進めることが重要です。効果的な削減を実現するための4つのステップを解説します。
STEP1:間接費の可視化
まず、間接費の現状を正確に把握することが必要です。間接費は製造現場だけでなく、管理部門や事務業務にも広く関わるため、どの部門でどのようなコストが発生しているのかを明確にすることが、適切な削減策を講じる第一歩となります。
可視化を行わないまま削減を進めると、必要なコストまで削減してしまい、業務効率が悪化する可能性があります。そのため、原価管理システムを活用し、各費用の発生状況を詳細に把握することで、無駄な支出を見つけやすくなります。
STEP2:KPIの設定
可視化を行った後は、削減目標を具体的に設定することが重要です。単に「コストを減らす」という曖昧な目標ではなく、「どの費用を、いつまでに、どれくらい削減するか」を明確にすることで、効果的な取り組みにつなげることができます。
例えば、
- 「半年以内に事務用品の購入コストを20%削減する」
- 「年間の電力消費量を10%抑える」
といった数値目標を設定することで、達成可能性を考慮しながら実行計画を立てることができます。また、KPIを設定することで各部門が具体的な行動をとりやすくなり、組織全体としての削減効果を高めることができます。
STEP3:具体的なアクションの検討・実施
KPIを設定したら、それを達成するための具体的な施策を検討し、実行に移します。例えば、労務費の削減を目的として業務の自動化を進めるためのシステムを導入することで、作業時間を短縮することができます。
また、印刷コストの削減を目的に、間接部門でペーパーレス化を推進することも有効です。無駄な印刷を減らすことで、紙やインクの消費を抑えるだけでなく、作業の効率化にもつながります。
その他にも、
- 電力使用の最適化
- オフィス備品管理の見直し
などの取り組みを通じて、間接費の削減が可能になります。大切なのは、単なるコストカットではなく、業務の効率を向上させながら削減を進めることです。
STEP4:実績のモニタリング
最後に、設定したKPIに対する進捗を定期的に確認し、削減効果を検証します。目標に対して実際の削減額がどの程度達成されているのかをデータで分析し、想定した効果が得られているかを評価することが重要です。
もし計画通りに進んでいない場合は、削減目標やマイルストーンを見直し、必要に応じて施策を修正することで、より効果的なコスト管理を実現できます。また、成功事例を社内で共有することで、他の部門にも応用できる施策を展開し、さらなる削減につなげることができます。
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間接費の削減をサポートするツール
間接費を効率的に削減するには、適切なシステムの導入が有効です。特に、間接労務費の削減を目的としたシステムを活用することで、業務の効率化やコスト最適化を実現できます。
ここでは、間接費削減に役立つ2つの主要なシステムを紹介します。
原価管理システム
原価管理システムは、企業のコスト構造を可視化し、削減すべき費用を特定するためのシステムです。
間接費の削減における、原価管理システムの期待効果は以下の通りです。
- 各部門の間接費を明確に把握でき、どこに無駄があるのかを分析しやすくなる
- 原価データを一元管理し、コストの発生状況をリアルタイムで監視できる
- 予算と実績の比較を通じて、計画的なコスト削減を推進
例えば、オフィスの消耗品費や電気代など、細かく分散している間接費を分析することで、無駄な支出を見つけ、削減に向けた具体的な対策を立てやすくなります。
工程管理システム
工程管理システムは、製造工程の可視化を通じて、間接業務の効率化を図るシステムです。
間接費の削減における、工程管理システムの期待効果は以下の通りです。
- 現場部門とのやり取り工数を削減(データ共有の効率化により、確認作業や問い合わせを減らす)
- 抜け漏れやミスを防止(作業状況のリアルタイム把握により、トラブル対応のコストを削減)
また、工程管理システムの導入は、直接労務費の削減にも寄与します。計画と実績の振り返りを通じて、工程ごとの問題点を把握し、生産性を向上させることで、無駄な工数や人件費の削減につなげることができます。
まとめ

コスト削減を進める際は、直接費よりも間接費に着目することで、製品の品質や納期に影響を与えずに効果的な削減が可能です。そのためには、まず間接費の可視化を行い、KPIを設定した上で、適切な施策を実行し、定期的にモニタリングすることが重要です。
さらに、原価管理システムや工程管理システムを活用すれば、間接費削減の効率を高めることができます。継続的なコスト管理を徹底し、無駄のない経営を実現しましょう。
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