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  • 業務改善
  • 2025.4.22

個別受注生産とは?特有の課題と解決策となるシステムを解説

近年、顧客のニーズがより多様化する中で、標準品や既製品ではなく、特注品やオーダーメイド製品に対応するための個別受注生産への関心が高まっています。

個別受注生産には、工程計画の複雑さ、原価見積もりの困難さ、そして見込み生産での効率化のアプローチとは相反する特有の課題が存在します。

本記事では、個別受注生産の基本的な特徴と課題、これらを解決するための最適なシステムについて解説します。

個別受注生産とは?

まずは個別受注生産の概要について解説します。

個別受注生産の概要

製造業において、製品を「いつ、どれだけの量生産するか」は、売上や製品在庫の量に大きな影響を与えます。

受注と生産のタイミングに着目すると、製造業の生産形態は大きく「見込み生産」と「受注生産」の2つに分類できます。「見込み生産」と「受注生産」の違いは、「生産が先か」「受注が先か」です。

受注生産はさらに「受注設計生産(ETO:Engineer To Order)」、「受注生産(MTO:Make To Order)」、「受注組立生産(ATO:Assemble To Order)」に細分化されます。

図1 受注タイミングと生産(製造)リードタイムによる生産形態の分類

個別受注生産は、一般的に顧客からの受注を受けた後に製品の設計から製造までを一貫して行う生産方式で、正確には「受注設計生産(ETO:Engineer To Order)」と呼びます。個別受注生産では、受注ごとに顧客のニーズや要求に応じた仕様が設定され、従来の見込み生産とは異なる柔軟な工程管理が求められます。

受注後に設計が開始されるため、製番管理やBOP(Bill of Process)などの工程管理手法が重要です。製番管理を活用することで、各製品の生産進捗を明確にし、トレーサビリティを確保できます。また、BOPを用いることで、製品ごとの製造プロセスを定義し、仕様変更が発生した際の迅速な対応が可能となります。

製番管理とは?

製番管理(せいばんかんり)とは、「製造番号(製番)」を基に生産工程を管理する手法です。品種、品番で管理するロット管理と違い、受注単位の製品や部品ごとに固有の製造番号やオーダー番号を割り当てることで、製造プロセス全体の追跡が可能になります。

特に個別受注生産では、製品ごとに仕様が異なるため、各受注に対して製造番号を付与し、材料調達・設計・生産・出荷までを一貫して管理することが求められます。

例えば、特注の産業機械を製造する企業では、製造番号ごとに必要な部品や作業工程を細かく管理し、各プロジェクトの進捗を明確に把握する必要があります。

BOP(Bill of Process)とは?

BOP(Bill of Process)は、「製造工程表」や「プロセスBOM」とも呼ばれる、製造プロセスを体系的に管理するための手法です。BOM(Bill of Materials:部品表)が「製品を組み立てるために必要な部品を階層構造で管理」するのに対して、BOPは「作業手順や工程表、作業指示など、製造に必要な技術情報を、製造プロセス情報、プロセスフローとして管理」します。

個別受注生産では、製品ごとに異なる製造工程が必要になるため、BOPを活用して適切な製造工程表を定義していくという工程計画が重要となります。

その他生産方式との違い

続いて、以下の生産方式との違いを解説します。

  • 受注生産(MTO:Make To Order)
  • 受注組立生産(ATO:Assemble To Order)
  • 見込み生産

受注生産(MTO:Make To Order)

受注生産は、受注後に製品の製造を開始する方式で、もっとも一般的な受注生産方式です。

例として、自動車など、受注後にオプションの組み合わせや内装・外装の色など、顧客の要望を反映して製造を開始するものがあります。

受注組立生産

受注組立生産とは、標準化されたユニットや部品をあらかじめ用意しておき、受注内容に応じてその部品を選択して最終製品を組み立てる方式です。

例として、パソコン等の電子機器の組み立てが挙げられます。

見込み生産

見込み生産は、受注生産とは対照的に、顧客の需要を予測してあらかじめ製品を製造しておき、在庫として保持する生産方式です。

例として、一般的な家電製品、日用品などが挙げられ、消費財や生産財などの分野に適用されています。

在庫を活用することで受注時の即納品を実現することができ、量産、繰り返し生産により生産性やコスト面でもメリットがあります。

個別受注生産における課題

続いて、個別受注生産における課題を解説します。

  • 納期管理が困難
  • コスト(原価)管理が困難
  • 生産効率の向上が困難
  • 資材購買、在庫管理が困難

納期管理が困難

個別受注生産における大きな課題は、納期管理が困難である点です。個別受注生産では、受注ごとに製品の設計や製造を行うため、作業工程ごとにリソースを考慮した計画立案が不可欠です。繰り返し生産ではないため当初の目標工数通りに作業ができなかったり、受注後に資材の発注を行うため予定通りの調達ができなかったりと、各工程のリソースが納期に大きな影響を与えます。

また、仕様変更や設計変更が発生すると、スケジュール全体を見直さなくてはならず、納期がさらに遅れるリスクがあります。

さらに、特定の熟練作業者にしかできない作業があり、作業負荷の平準化ができずボトルネックが解消できないなど、計画全体のリードタイムが左右されることもあります。

コスト(原価)管理が困難

コスト(原価)管理が困難であることも、個別受注生産の課題の一つです。受注ごとに異なる仕様で設計、製造を行うため、作業工程ごとの実績工数に応じたコストを割り出しにくいほか、資材に関しても受注後に個別に発注することが多く、コストの算出を難しくしています。

また、個別受注生産の特性上、繰り返し生産におけるスケールメリットが享受しづらく、個々の受注単位でコストが膨らみやすい傾向にあります。これにより、全体としての原価管理が複雑化し、受注ごとの採算性を正確に把握するのが難しくなっています。

生産効率の向上が困難

個別受注生産はジョブショップ型の生産方式を採用しているため、作業工程間のワークの移動や、切替段取りなどが発生し、標準化された繰り返し生産に比べ生産効率を上げることが難しいという課題があります。

さらに毎回作業の内容が異なるため、作業者の作業習熟度の向上や作業の標準化、作業分析からの作業改善など、生産効率向上を行うための改善点の難易度が高いことが問題となります。

資材購買、在庫管理が困難

個別受注生産は資材購買の業務が複雑です。これには、各受注に応じて部品や資材を都度発注することが多いため一度に手配する資材の数が大量となったり、特注品が含まれていたりなど、発注から入庫までの手配リードタイムが長く納期が不正確となることが起因しています。

在庫については、一般的な製品在庫や作り置き品が少ないのが特徴です。ただし、買い置き品と呼ばれる鋼材や共通資材などがあり、特に鋼材など高価なものについては在庫量を把握するために入庫、出庫の管理を行う必要が有ります。

効率的な資材購買、在庫管理を行うには、手配状況の見える化やリアルタイムな在庫情報の把握が求められます。

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個別受注生産の課題に対する解決策

ここからは、個別受注生産の課題に対する解決策をご紹介します。

  • 工程管理システムの導入
  • 原価管理システムの導入
  • 生産プロセスの標準化と自働化
  • ユニット、部品の標準化、共通化の推進

工程管理システムの導入

まず、納期管理が困難であるという課題には、工程管理システムの導入が有効です。

個別受注生産では、受注ごとに設計から製造まで毎回製造工程表を構築するため、工程計画や工程設計が必要となります。工程計画や工程設計を行うためには、作業工程間の分岐、合流など、作業手順を俯瞰して見て、製造工程表としてのBOPを直接メンテナンスできる機能が必須となります。この機能により、急な設計変更やスケジュールの調整にも迅速に対応できます。

工程管理システムの導入には、以下のようなメリットがあります。

  • リアルタイムの進捗管理
    急な仕様変更が発生しても、即座に工程計画を見直すことができるため、納期遅延リスクを低減できる。
  • 作業標準化の促進
    各作業工程の工数をデータ化することで、計画精度が向上し、作業の属人化を防げる。
  • 納期の予測精度向上
    納期予測機能により、リードタイムの精度が向上し、顧客への納期回答が正確になる。

これらの機能を持つ工程管理システムは、納期管理の強力なサポートとなるでしょう。

原価管理システムの導入

続いて、コスト(原価)管理が困難という課題に対しては、原価管理システムの導入が解決策となります。受注ごとに製品仕様が異なるため、原価の正確な見積もりが難しく、多品種少量生産では量産のスケールメリットが得にくいため、原価が膨らみやすいという問題があります。

原価管理システムの導入には、以下のようなメリットがあります。

  • 見積もり精度向上
    材料費や作業時間をデータ化し、類似案件のコストデータと比較することで、精度の高い見積もりを迅速に作成できる。
  • 利益率向上
    受注ごとに採算性を分析することで、赤字案件を事前に回避できる。
  • リアルタイムなコスト管理
    進行中の案件のコストを随時モニタリングし、原価が想定より増大している場合に早期対応が可能となる。

受注単位で利益が出たかどうかをしっかり把握できる仕組みを構築することで、各プロジェクトの採算性を明確化し、適切な価格設定やコスト削減策を講じることが可能となります。

生産プロセスの標準化と自働化

量産と比べると生産効率が低下しやすい課題に対しては、生産プロセスの標準化と自働化が鍵となります。

個別受注生産は基本的にジョブショップ型の生産方式であり、受注ごとに異なる製造工程表が求められます。

生産プロセスを標準化・自働化するメリットは以下の通りです。

  • 生産リードタイムの短縮
    生産プロセスを標準化し、類似製品を整理することで、類似製品の生産プロセスの流用が可能となり、生産プロセスの標準化に繋がり、作業時間の短縮にも結び付く。
  • 作業者の負担軽減
    自働化技術を導入することで、手作業によるミスを減らし、作業者の負担を軽減できる。
  • 人手不足の解消
    熟練工が不足している場合でも、標準化された手順に基づく生産が可能となり、生産体制の安定化が期待できる。

標準化により各作業工程のばらつきを抑え、自働化技術を取り入れることで、属人化を防ぎながら作業効率を向上させ、全体の生産性を高めることが可能です。

ユニット、部品の標準化、共通化の推進

資材購買、在庫管理が困難なことに対しては、部品標準化、共通化の推進が有効です。

部品やユニットを機能やサイズなどで標準化、共通化することにより、手配する資材の種類を絞込でき、在庫の種類や在庫量を抑えることが可能となります。

部品標準化、共通化の推進には、以下のようなメリットがあります。

  • 在庫コストの削減
    標準品や共通部品を増やすことで、調達コストを下げ、在庫管理の効率化が可能。
  • 調達リスクの軽減
    標準品や共通部品の使用により、特注部品の納期遅延リスクを減らし、生産計画の安定化につながる。
  • メンテナンスの効率化
    標準品や共通部品を使用することで、保守部品の管理が容易になり、顧客へのアフターサービスの迅速化が可能となる。

標準化、共通化の推進により、必要なユニットや部品の種類を絞ることで、在庫管理の複雑さを軽減します。

まとめ

個別受注生産は、顧客のニーズに合わせた柔軟な製品提供を可能にする一方で、納期管理やコスト(原価)管理、生産効率、在庫管理など、様々な課題が発生します。

これらの課題を克服するためには、工程管理システムや原価管理システムの導入、生産プロセスの標準化・自働化、さらにはユニットや部品の標準化と共通化といった具体的な対策が不可欠です。

個別受注生産に最適なシステムを活用することで、企業は受注から製造までのプロセスを効率化し、迅速かつ的確な対応を実現できます。結果として、顧客満足度の向上と持続可能な経営基盤の構築が期待されるでしょう。

まずは、現状の工程管理や原価管理のどこに課題があるのかを洗い出し、その解決に適したシステムの導入を検討しましょう。

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