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新米班長 いとう君 第4話 Kaizen

いとう君が日々の残業から抜け出すために工夫した結果、製造工程の大幅な改善に結び付き、最終的にコスト・リードタイムともに半分近くまで削減していく汗と涙の青春物語!

前回は同期の高橋君から、いとう君の部署に生産管理の前提がないことを指摘されてしまいました。

第3話「生産管理の前提が無い…」はこちら

登場人物紹介

  • いとう君
    いとう君

    目黒製作所の生産統括課で、新人教育や業務改善、作業の進捗管理をしている新米班長。努力と根性で様々なトラブルを解決してきたものの、そろそろ根本的な業務効率化を進めたいと頭を悩ます27歳。

  • 斉藤さん
    齊藤さん

    いとう君の親友。いとう君は彼女だと思っている。システム開発会社勤務。行動力と実行力に長けている。いとう君は、彼女が具体的にどのような仕事をしているのか実は理解していない。

  • 鈴木さん
    鈴木さん

    いとう君の上司。設備機器事業本部 圧力容器製造部 生産統括課課長。面倒見は良いが社内では製造現場が強いため、社内的にはどこか頼りないと思われている。

  • 佐藤さん
    佐藤さん

    目黒製作所の設備機器事業本部 圧力容器製造部 生産統括課試験課課長。声が大きく、強面だが、意外と、丁寧に現場の作業内容を教えてくれる。

  • 田中さん
    田中さん

    目黒製作所の設備機器事業本部 圧力容器製造部 生産統括課製缶課課長。製造現場のリーダー的な存在。

  • 守衛さん
    守衛さん

    目黒製作所の守衛。いとう君が残業が多いため、退勤時になにかと声を掛けられ、顔見知り。

  • 高橋君
    高橋君

    設備機器事業本部 バルブ製造部工務課。いとう君の同期。生産管理担当。

あらすじ

いとうくんは彼女からカイゼンの講義を受けます。

彼女は早速、現状の問題点と課題を洗い出し始めました。

このヒントから、いとうくんは現状の仕事を変えていくことができるのか。

#4 Kaizen

意気揚々と勉強しにいったのはいいが、簡単にノックアウトされて自部署に戻ってきました。

課長に、量産工場でうまくいっている仕組みは一品一様の我が部署では使えそうもないこと。
そもそも部品表というおおもとのデータが作成できないことを説明し、ちょっと落ち込みながら昼食を食べ始めました。

ここの社食のメニューは安さと量が取り柄えで、毎日昼と夕方の2食をほぼここで食べています。

大学の友人達に聞くと、毎食ビジネス街のお店で外食すると昼食で千円以上でていくそうです。

私は毎日2食で800円以内です。
あー仕事で壁にぶち当たって食費について考え事してるなんて、だいぶ参っているようです。

そのとき携帯に電話が。
彼女からです!

齊藤さん

齊藤さん

もしもし。
やー、いま大丈夫?

うん、食事中だけど今終わるので、かけ直すよ。

いとう君

いとう君

齊藤さん

齊藤さん

わかった。

社食をでて中庭に行き、彼女に電話します。

いとう君

いとう君

やー、この前はわるかったね。

いや、私の方こそ理由をちゃんと聞かないで怒ってごめん。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

今日、このままトラブルがなければ早く帰れるけど。

わかった、夕方電話してね。
期待しないで待ってるから。

齊藤さん

齊藤さん

よかった。
仕事は忙しくて全然改善される気配はないし、自分でちょっと頑張ろうと思っても簡単に挫折してしまうし、このまま彼女と気まずい雰囲気のなかで関係を修復する努力も労力がいるし、このまま終わってしまうのかと気弱になりかけていましたが、さて今日はこのままトラブルも無く終わればたまには定時で帰ろう!

その途中で彼女に電話し、待ち合わせ場所を決めました。

彼女より先に着き、先にビールを注文し一杯飲み始めました。

齊藤さん

齊藤さん

よ!

と言って、彼女がきました。
彼女も一人で自分の飲み物を注文し、

齊藤さん

齊藤さん

食べるよね?

と私に言って、食事のオーダーを始めました。

オーダーが終わると同時に、彼女の飲み物が来ます。

あざやか!いつも段取りがいいんだよね。

いとう君

いとう君

さて、とりあえず、おつかれ!

といって乾杯し、先ずは私から、

いとう君

いとう君

先日はごめん。
あまりにも疲れ果てて、状況を説明するのもしんどくて。

まー、私も聞き上手になってあげればよかったんだけど。
そうは言っても、いとう君のドタキャンは多すぎるし、そんなに急に残業になったり普通しないでしょう。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

そうなんだよ。
会社の同期にも言われるんだけど、俺の職場がなにせ特殊な環境で。
うまく説明できないんだけど毎日トラブルの山なんだよ。

そんなトラブルの山の職場って、トラブル対応室みたいなところ?
でも工場の中で現場じゃなくて、事務処理してますっていっていたよね。
いままで詳しく聞かなかったけど、ちゃんと話して!

齊藤さん

齊藤さん

ということで、彼女にとくとくと自分の仕事内容について説明しました。

数分説明した後、彼女の目が気のせいか輝いています。

まいったなー、いとう君の仕事も知らなかったけど、私の仕事も説明してないよねぇ。

齊藤さん

齊藤さん

と彼女がなんだかうれしそうに話します。

いとう君

いとう君

君はたしか、営業からコンサルタントのような仕事に変わったっていっていたよね。

うん、良く覚えていてくれたわね。
私はね、実は!今、製造業の業務改善を手伝う仕事をしているのよ。
まだコンサルタントというにはおこがましいけど、もうかれこれ2年以上勉強しているのよ。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

えー、ということは俺の悩みが理解できるよね。

もちろん。
理解できるというより、改善の手伝いができるんじゃないかと思うけど。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

え、まじで!

まず、いとう君の職場だけど、典型的な個別受注の職場よね。
受注してから設計、製造を行うんでしょ。
世の中の生産管理は、たいてい部品表がベースにあって、いかに在庫を削減するかをポイントにしているけど、いとう君の職場では中間在庫なんてないでしょ。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

そうだね、標準部品のような購入品の在庫は若干あるけど、中間在庫なんてないよ。
そうそう、実は今日、同じ社内の別の部署にいる同期に、そこで使っている生産管理の仕組みを聞きに言ったんだよ。
そしたら、「部品表がないなんて生産管理ができないよ」って言われて、がっかりしてたんだよ。
部品表が無くても、なんとかなるのかなー?

はい、ポイントはいいですねー!

齊藤さん

齊藤さん

と言う彼女の顔はやけにうれしそうだ。

部品表は、ものを中心にしてものの変化を現していくんだけどね、いとう君の職場は設計業務や工場出荷後の現地工事まで対象でしょ。
だから、ものではなくて発生する作業を中心に考えないといけないんだよね。
だから、既存の生産管理の仕組みでは無理があるので、別の管理手法が必要なんだよね。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

へー、それで別の管理手法って何?

まあまあ、料理が冷めない内に食べなきゃ!

齊藤さん

齊藤さん

と言いつつ、俄然、彼女の目は輝いているように見える。

食事の後バーに寄り、齊藤さんの講義を聞きます。

いとう君

いとう君

さて、さっきのつづきだけど、新たな管理手法ってやつを教えてよ。

あら、新たな管理手法とは言ってないわよ。
別の管理手法っていったのよ。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

うんうん、それで。

まず1つめは、プロジェクト管理よ。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

えー、プロジェクト管理なら知ってるよ。
でもプロジェクト管理は、プロジェクトごとに管理する手法じゃないか。
工場の中には何百ものプロジェクトが同時に流れていて、そのプロジェクトを一件ずつ管理しても、結局、いわゆるリソースというやつが競合してまったく使えないんだよ。

そうね、良く知ってるわね。
まだ続きがあるのよ。
いとう君の工場は、複数のプロジェクトが錯綜している状態でしょ。
従来のプロジェクト管理手法には、複数プロジェクトのマネジメントという観念がなかったのと、元の期間を短縮するためにどうしたら良いかというアプローチや方法論もないし、予定は遅れていくという前提で、いかに遅れないようにするのかを問題にしていたのよ。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

へー、そうなんだ。

まー、私もまだ勉強中なんだけどね。
日本の製造業は、元の期間、つまり工期を短縮するためにどうしたら良いかというアプローチでカイゼンを行ってきたんだよ。
ところで、リソースの定義だけど、なにがあるの?

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

うちの工場の場合には、作業者、機械、そして作業場所がリソースかな。

へー、作業場所ってなに?

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

かなりの大物を製作しているので、作業する場所が問題になるんだよ。

そうか、そんな制約もあるんだね。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

うん、それで?

まー、急かさないで聞いてね!

齊藤さん

齊藤さん

相変わらず彼女の目は輝いています。

2つめの手法はカイゼンのアプローチよ!

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

えっ、よくわからないよ?

カイゼンというアプローチで、まずは現状の工場の状態を理解することよ。
たとえば、いとう君が関わっている製品のリードタイムはどのように決まるの?

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

えーっと、各職場長が図面を見ながら、工数を見積もるんだよ。

ふーん。
じゃーその図面が無い場合はどうするの?
たとえば受注タイミングとかいわゆるプロジェクトの開始時点ではどうやってリードタイムが決まるの?

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

えー、難しいこというよな。
過去の同様の物件を参考にして…

そうなるわよね。
ところで、リードタイムの定義はどう考えてるの?

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

すべての工数の合算だよ。
いわゆるクリティカルなんとかで決まるんだよね。

あー、クリティカルパスね。
でもそれだとカイゼンの糸口が見つからないわよ。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

うーん…

じゃ、答えを教えてあげるね。
リードタイムの定義はね、ものを製作する作業の時間と当たり前だけど運搬などの時間もあるよね。
そしていわゆる滞留も考慮したすべての時間の合計よ。
つまりリードタイムが、作業の時間の合計だという認識だとなにもカイゼンに結びつかないの。
停滞の認識があまりないということは、カイゼンの可能性がたくさんあるってことね。

齊藤さん

齊藤さん

いままでの話を整理すると、いとう君の職場の特徴は、一品一様であり作業時間を正確に見積もる事は困難。
しかし経験的な工数算出は可能だが、作り直しが発生したり、設計変更が発生する。
これらの突発作業やその発生する工数を事前に予測することは無理だよね。
でも、すべての進捗が把握できていて、その進捗状況を反映して計画の組み替えがスピーディーにできればいいよね。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

言ってることはわかるけど、具体的にはどうしたらいいのか、わからないよ。

えー、こんなにわかりやすく教えてあげたのにー!

齊藤さん

齊藤さん

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