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- 工程管理で製造現場を強くする技術マネジメント講座
- 2025.11.28
テクニカルコンサルタント荒井善之の 工程管理で製造現場を強くする技術マネジメント講座 Vol.1 ~設計データの整備は工程管理の近道~
多くの製造業では設計・生産技術と現場・製造は仲が悪い(コミュニケーションが少ない)との声を聞きます。「正しい(と思っている)設計図を流していれば良い」「図面があれば加工はできる」と言う言葉は嘘ではないでしょう。しかし、それだけで製造は成り立つのか?さらに言えば効率的な作業ができているのか?ムダ・ムリ・ムラは発生していないのか?設計・生産技術と現場・製造の間で流れる図面データは「ものづくり」の要ですが、設計・生産技術はそれだけを後工程に流していれば良いのでしょうか。
工程管理の観点から設計データの整備がいかに重要か事例を基に確認していきましょう。
製品の品質とコストの8割は、設計段階で決まる
「製造業では、製品の品質とコストの8割は、設計段階で決まる(出典:2020年版「ものづくり白書」)」という言葉を聞いたことがあると思います。設計段階では後の工程に比べて問題点を早期に発見しやすいため、設計における取り組みが製品全体の品質に大きな影響を与えるとされています。であるならば、製品の品質確保を一つの目的とした工程管理と設計が分断されていると思えません。では、どのように繋がっているのか?
工程管理は、生産計画に基づいて製品の製造プロセスを進行・管理します。主な目的としては、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)の最適化を図り、効率的な製造を実現することです。
すなわち工程管理とは、「製品製造における各工程のスケジュール作成、進捗管理、負荷調整などを行い、納期遵守、品質確保、生産性向上を目指す業務」と言われています。これは、より広範な「生産管理」の一部であり各工程を細かく管理・統制する役割を担っています。
- 品質(Quality)の確保
- コスト(Cost)の削減
- 納期(Delivery)の遵守
それぞれの目的から設計データと工程管理が繋がる事例を見てみましょう。
品質(Quality)の確保:
製造業において品質を確保するために設計が果たす役割は非常に重要と言えます。設計段階での適切な対応は、後工程において製品の最終的な品質に直接影響を与えるからです。
例えば、素材から加工する部品を複数個組み合わせる場合、その検査は当たり前ですが回数が増えて複雑になります。まず素材入荷段階で検査を実施、加工後に加工公差を検査し、組み合わせた後に組付け公差を検査する。逆に標準部品を組み合わせた場合は組み合わせ後の寸法公差を検査すれば良くなります。標準部品は一般的に高い精度が保証されているからです。
検査の回数が多くなればなるほど合格を維持することが難しくなるのは必然です。設計段階でいかに標準部品を使い込むかは設計者のスキルと思われるかもしれませんが、使うべき標準部品がCADの画面に表示されてくれば設計熟練者でなくとも使うことが可能です。ポイントは自社で使う標準部品をリストから選択し整理し整備しておくこと、そして、できればCADの画面に表示し選択できるようにすれば設計時間の短縮とCADへ描きこむミスも無くなります。CAD連携が難しい場合はExcel等でチェックリストとして運用することでも検査そのものの回数は減り、品質を確保し易くなります。
コスト(Cost)の削減:
製造業では製品のコストの8割は設計段階で決まると言われていますが、設計はどのようにコストに係わってくるのでしょうか。具体例で説明していきましょう。
直方体の鋼材(鋼鉄の塊)をL字に削り出す場合、加工の工程ではどのような加工工具を必要とするでしょうか。
L字に削るための方法はいくつもの選択肢があります。先端が角のフラットエンドミルであればその工具で削り続けられます(工具摩耗を無視すれば)、先端が丸のボールエンドミルであれば大きい径のエンドミルで大きく削っていき、最後は小さいエンドミルで角に近い状態まで追い込んで行きます。この場合は複数本のエンドミルが必要ですし加工用NCデータも複数本必要となります。もしくはワイヤー放電加工によって高精度な加工を行うことも可能です。
どの加工方法が良いのか、どの加工工具が必要なのかは設計の意図によって変わってきます。一般的にはワイヤー放電加工のほうが設備の初期コストも運用コストも高いと言われていますが、加工費が安い傾向のエンドミル加工では人が就いていないと加工できない場合もあります。この場合は人のチャージが加味されるのでエンドミル加工の方が高コストとなりますが加工時間は短くなります。また人件費が高額と考えるならばワイヤー放電加工は無人で夜中でも動いてくれますのでエンドミル加工よりも安いかもしれません。一概にどの加工方法が安いとは言い切れないですし、安いから悪いとも言い切れないのです。加工時間を短くすることで、それを付加価値として高く売れるケースがあるからです。こうなるとコスト削減が絶対ではなくなってきます。
納期(Delivery)の遵守:
納期遵守とは、顧客が指定した納期を守るため、生産計画に従い各工程の進捗を把握することで納期遅延を防ぎます。これを実現するためには「進捗の見える化」「情報の見える化」が重要です。よく耳にする当たり前のキーワードですが、これらを実現するため具体的にどのような取り組みを行っているでしょうか。
情報の見える化で代表的な事例は、モノを探す時間の多さです。皆さんの会社、特に製造現場においてモノを探す時間を調査することを是非お勧めします。ある製造業の特定のスタッフは全体の約20%の時間がモノを探す時間に費やされていましたが、三次元設計データを現場で簡単な操作で確認できる環境を構築することによりその時間は大幅に改善されました。二次元の図面データだけでは確認ができていなかったのです。一昔前は二次元の図面データを読めて一人前との空気が強かったと思います。(今もそうかもしれません)
ですが良い製品を製造するために二次元も三次元も関係ないはずです。三次元設計データを製造現場で簡単に確認するためにはCADデータの管理を標準化する必要があります。一般的にはPLMツールによる管理を思いつきますが、そこまで高額なソリューションを導入せずとも管理は可能です。ですが管理方法の標準化は必須です。
進捗の見える化では納期ギリギリに製造完了が明確になれば良いなどと考える人はいないと思いますが、ではどのタイミングで、どの作業の進捗が見えれば良いのでしょうか。調達でそれを確認してみましょう。
まず無駄のない製造計画を立て適切なタイミングで部材を調達し、製造工程に投入する必要があります。この時に調達すべき部材は、いわゆる部品表が元となりますが、設計段階でどこまで整備をしておくべきでしょうか。例えばボルトとナットはセットで使うものですが、セットで調達すべきでしょうか。在庫にボルトがあったならばナットは調達しなくて良いでしょうか。
セットで調達したほうが管理し易いかもしれませんが材料費は高くなります。また製作品は設計で用意される部品表においては、直方体の鋼材を加工し終えた状態の加工後の寸法が表記されています。しかし調達においては当たり前ですが加工前の寸法が必要です。
この寸法が鋼材を提供する材料メーカーの標準寸法以外であったならば特注品扱いとなり納期は遅れるでしょう。手配する鋼材の素材寸法を鋼材メーカーと調整(標準化)して設計データに盛り込むことで特注品を削減し、納期は短縮されコストも削減されます。調達部門が図面を読み込み、製作品に対してプラス寸法を加えて鋼材寸法を明記する、この様な作業を行うことが仕事と思っている作業者は多いのではないでしょうか。しかしこの様な作業こそ機械(コンピュータ)に任せて人が行う必要はないのです。
設計データの整備(標準化)の重要性
昨今は三次元設計が主流であり(主流でない業界もまだあります)設計で作成される部品表(設計部品表:E-BOM、Engineering BOM)は、その設計ツリー構成によって親子関係などが示されることが多くなっています。設計ツリーの構成は設計の手法そのものであり、つまり設計手法が直接部品表として出力されることとなります。設計手法の標準化は先の述べたQCD(品質:Quality、コスト:Cost、納期:Delivery)向上に直結するだけでなく設計者の設計ノウハウの見える化に繋がっていきます。
この設計データの整備(標準化)は、なかなかに難しい。なぜか? 昔は現場主導でものづくりを行っていました(今も日本ではその傾向が強い)、なので設計が多少”緩い図面”を出しても現場が上手く纏めてくれていました。また現場の能力が高いがゆえに設計そのものを外注に出している業界も散見されます。ものづくりの根幹である設計を外部に委ねた時点で8割のコストを外部に任せることとなり2割のコストでしか勝負ができないこととなります。
しかし昨今の短納期要求を実現するときに緩い情報を現場の能力(阿吽の呼吸)に任せていてはアジア各国の製造スピードには着いていけません。
そもそも現場が標準化されていない作業を上手く纏める作業自体は本来なくとも良い作業であり、人は更にクリエイティブな作業に就くべきです。その為には設計データの整備(標準化)を進め工程管理をより高いレベルに高めていくことが重要ですが、残念ながら多くの製造業では何を標準化すれば良いのか指標がハッキリしていない状況があります。このテーマについては今後のコラムで記したいと思います。
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まとめ
工程管理をより効率的に進めていくために、そしてQCDの最適化を図り効率的な製造を行うために、設計データの整備(標準化)は重要な役割を果たしています。
重要な活動としては、
- 会社のビジョンを設計に盛り込む
- 全工程を俯瞰して設計標準を作り込む
- データを基に継続的なPDCA(計画:Plan、実行:Do、評価:Check、改善:Action)を廻す
製造業にとってこれら活動を実行し継続させていくことが持続的な成長と競争力強化のために重要なプロセスとなります。
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