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工程管理で製造現場を強くする技術マネジメント講座
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2026.4.10
テクニカルコンサルタント荒井善之の 工程管理で製造現場を強くする技術マネジメント講座 Vol.3 ~設計者は現場の進捗を知りたい(はず)、製造現場は設計の進捗を知りたい(はず)~
工程管理と設計の関係性と実例を示してきた本コラムの3回目は設計の進捗と製造現場の進捗について、それぞれの部署はお互いの進捗を知りたいのかを考えてみたいと思います。
製造スタッフは探す「作業」を繰り返している
コラム1回目のなかで、ある製造現場の特定のスタッフは全体の約20%の時間がモノを探す時間に費やされていたこと、三次元設計データを現場で簡単な操作で確認できる環境を構築することによりその時間は大幅に改善されたことを紹介しました。実はこのモノを探す時間の中には「出図はされているか?」という設計部署への問合せも含まれています。図面が出るまで待っていれば探す時間はなくなるのでは、と思った方もいるでしょう。ですが製造現場の予定表(ホワイトボードなど)で昨日が出図日であったならば手元に図面が届いていない場合に探しに向かうのは当然です。
ここでいくつかの落とし穴があります。製造現場の予定表にホワイトボードで誰かが(工場長かも)毎朝昨日までの進捗を記入していて、たまたま工場長が出張していたために予定表が更新されてなかったら。出図は済んでいるけれど紙の図面をたまたま誰かが保管場所(製造工場では図面の保管場所が決まっています)から持ち出していたら、他にも図面を探す「作業」を毎日、何人もの製造現場のスタッフは繰り返しているのです。
設計スタッフも探す「作業」を繰り返している
さて設計スタッフはモノを探すことはないのでしょうか?やはりいくつかの探す「作業」が存在しています。新規の設計を行う際に過去の図面を参考にしたいはず。そのために今回と似た形状や似た構造を思い出して過去の図面(CADデータ)を探します。自身が設計したならばまだ探せる可能性はありますが、他の設計者の記憶の中までは探すことはできません。顧客からの図面(CADデータ)が届いているのかも探します、入荷データ処理の工程を誰かが処理していればフラグが立つはずですが、そもそも入荷データ処理の工程を定義し実績として収集しているでしょうか。
出図後の製造工程を見たとき金型製造の場合には1回目の試作結果は非常に重要です。この結果によっては最悪の場合作り直しが発生するため、設計スタッフは試作タイミングを知り、試作結果の情報を入手したい。修正などが発生した場合は主に設計者が多くの指示と手配を行うこととなるためリスクを早く確認したいのです。自身の設計が心配なのです。つまり設計スタッフも探す「作業」を毎日繰り返しているのです。
ということで、設計スタッフも製造現場スタッフも互いの進捗だけでなく、全工程の進捗を知りたいはずです。リアルタイムな進捗を共有できれば無駄な時間を節約できるはずですが、では進捗を共有するためには何を行えば良いのか、何らかのシステムを導入する必要があるのか、そもそも探す時間を仕事と思っているかもしれないスタッフには何から手を付ければ良いのか判断することは難しいと思います。
進捗を共有するためにまず行うことは「言葉(単語)」の共通化
さて皆様の工場ではCADを操作する設計スタッフと、製造現場で加工機やプレス機を扱う、またはグラインダーなどを扱う製造スタッフとの意思疎通はどのように行われているでしょうか? 昭和を知っている筆者の感想としては製造現場のスタッフは寡黙な職人という印象で、CADを使うスタッフは彼らに声を掛けにくい空気感のなかでも製造現場に足を運び、教えを受けていたように思います。設計スタッフから見ると製造現場の年季が入ったベテランスタッフは自身の親と変わらない世代です。なかなかコミュニケーションが取りにくい。
この両者のコミュニケーションが取りにくい大きな原因の一つとして「言葉が通じない」ことがあると考えています。例えばプレス金型の一つの部品を「ホルダー」と言ってみたり「上型」と言ってみたり、加工方法を「ミーリング」と言ってみたり「フライス加工」と言ってみたり、同じものなのに互いに別の「言葉(単語)」で会話をしていては話が噛み合わないのは当然です。最後は口論になってしまいます。(昭和の時代は口論のレベルを超えていましたが)ちなみにプレス金型は作り直しを何度も行うのですが会社によって(主に自動車メーカーの系列別で)、補正・熟成・玉成などと呼ばれます。
「図面」はコミュニケーションツール
ここで共通の言葉で会話できるものが「図面」です。図面を前にして設計スタッフと製造スタッフ両者は図面に示された対象物を指差しながら技術的会話を行うことが可能でした。従って共通言語たる「図面」を理解すること(図面を読めること)は、製造現場スタッフとのコミュニケーションに必須科目だったのです。
設計スタッフと製造スタッフのコミュニケーションツールである図面は、時代と共にCADシステムの中で3D化(まだ2Dが多いとも聞いていますが)されてきました。しかしコミュニケーションを取るためにその都度両者がCAD画面をのぞき込んで技術的会話を行っていては3D化の効果半減です。製造スタッフ自身が3D設計データを読んで加工を進められなければ紙図面時代と媒体が変わっただけです。
つまり2Dであろうと3Dであろうとコミュニケーションのための「言葉(単語)」の共通化(標準化)は必要であり、3D化に伴う「図面レス(筆者は性急な図面レスをお勧めしません)」を進めるために共通化(標準化)は必須であるはずです。他にも3D化を進めるうえで必要な標準化はいくつもあり大きな労力を必要としますがその効果はあるはずです。例えば新卒の社員からすれば「図面」より「3Dデータ」のほうが理解しやすいはず。彼らはITネイティブであり画面の中の立体に慣れているのです。つまり図面を読むスキルが要らなくなります。もちろん技術情報を伝えないわけではありません、異論はあると思いますが、この辺りのテーマは別の機会に記したいと思います。
進捗を共有するための解決策
お互いの進捗を知るために次の解決策を提案したいと思います。
実績工数を含まない工程も必要
工程単位の実績をリアルタイムに入力できる仕組みと、迷うことなく入力できる作業工程名と、入力を面倒と思わない仕掛けが揃って初めてリアルタイムな実績入力が可能になります。先回のコラムで示した通り、設計を含む全作業工程(外注も含む)を俯瞰して見て粒度を合わせた工程を定義する必要がありますが、実績を含まない工程も必要です。
皆さんの会社では「出図」のタイミングを正確に把握できているでしょうか。「そんなことは当たり前だ」と言われると思いますが、では「出図」のフラグが立つまで他の部署は何もアクションを起こさずとも大丈夫でしょうか。例えば数か月のリードタイムが発生する鋳物を手配する場合、この期間を含めて製品納期を設定していては厳しい短納期競争に追いつかないのではないでしょうか。おそらくは未完成な「出図」を何らかの判断で鋳物業者に手配をかけていると思います。
この何らかの判断ポイント(実工数は発生しない)を工程の区切りとする必要があります。筆者は「関所」と呼んでいます。つまり「出図」においては最終的な正式な「出図」と、先行購買のための仮「出図」が必要となります。正式な「出図」はもちろん明確な区切りが必要です。設計レベルを上げるために設計作業を続けたい気持ちが少なからずあるのが設計者の心情ですが、ズルズルと何度も出図するわけにもいきません。どこかで区切りが必要です。この区切りを過ぎた段階(工程「出図」のフラグが立つ)で後工程は正式に動けます。
スケジュールに対する計画・実績・見込みを管理する
実績をリアルタイムに入力するためには計画を示す必要があり、計画と実績の差分を見込みに活用する必要があると先回示しました。「似た形状でも新規の製品を製造するときに製造計画を立てることは難しい、ましてや見積り金額を算出するには長年の経験と勘がものをいうのだ」と、製造を知っている営業スタッフに指摘を受けます。その通りでしょう。ですが標準化された情報の実績を最低でも1年貯めていくことでマスターデータとしての計画は立てることができるようになります。「鶏と卵」となってしまいますが、まず計画を立てます。その計画に対してリアルタイムな実績収集を行って差分を見てください。必ず計画と実績が一致する工程が現れてきます。
言葉(単語)を共通化する
先程の例でも挙げましたが一つの部品を一つの工程を一つの設備を、全社で共通の言葉として会話できているでしょうか。例えば部品名、多くの製造業では既に部品名は全部署で共通化されているかもしれません。ですが同業界の他社では呼び方が違っていることが多くあります。製造業界でも方言があるのです。まずは自社内だけでも共通にしたいと思いますが、自社内での部品名をコンピュータ(情報を処理するシステム)に対してどのような言葉として伝えているでしょうか。
おそらく人が理解する部品名は「単語」として共通化されていると思いますが、鋼材部品105、鋳物JP-330、くらいの文字数ならまだしも中には、B-A20-D9-59803、など自社スタッフでも理解できない部品名になっていないでしょうか。そしてこの部品名をコンピュータにも伝えていないでしょうか。ある製造業で人が認識する部品名をそのまま管理システムに適用していると聞いたことがあります、その後の改善に非常に苦労されたそうです。
人が理解できる(覚えられる)部品名を使いつつ、コンピュータが理解できる部品名(部品番号)を定義することで管理が容易になります。二つの部品名(部品番号)を紐づけて管理する必要がありますが、コンピュータはこのような管理が得意な道具です。コンピュータにできることはコンピュータに任せましょう。
進捗情報の共有(例)
以下の図は前職で構築し営業を含む全部署で活用した情報ポータルサイトの一画面です。WEB画面内に3Dデータを表示、セレクトしたプレス金型の部品(鋳物:あずき色)の進捗がリアルタイムで表現され、画面下半分に「工区」「作業工程」「進捗」「最終作業者」「最終作業日」「設備」それぞれの今の情報を示しています。例えば作業工程「組み付け」が完了しているならば、次の作業は仕上げ工区の「調整」「磨き」「塗装」などになります。
仕上げ工区の担当者は自身の作業を始めるための準備が完了していることをWEB画面からリアルタイムに確認できます。モノを探しに行く必要はありません。「組み付け」の実績情報を入力するのは機械加工部署かもしれませんし、組み付け部署かもしれませんが、彼らがリアルタイムに入力した情報を後工程の仕上げ工区が利用するのです。自身が入力することで他部署の助けになると認識してもらうことと、いくつかの仕掛けによりリアルタイム入力の精度は向上してきます。
まとめ
設計の進捗と製造現場の進捗について、それぞれの部署はお互いの進捗を知りたいのかを考察してきました。その答えとしては製造に関わる「全てのスタッフは全ての部署の進捗をリアルタイムに知れると便利だが、その術を知らない」であると思います。これを実現することで多くのムダ・ムリ・ムラが解消されるはず。そのための施策として以下を挙げました。
- 実務に則した工程を定義する
- 計画を立てリアルタイムな実績を入力する
- 自社内の言葉(単語)を標準化共通化する(コンピュータに対しても)
この施策だけで完全とは思いませんし、各社それぞれの形態があり状況がありますので施策も諸々あろうと思います。しかし全ての部署の進捗をリアルタイムに共有するためのこれらの施策はムダ・ムリ・ムラ解消の大きな一歩となり、先に示した進捗情報の共有(例)などの仕組みで運用することで大きな効果を得ることが可能となります。社内で言葉(単語)が通じるか?是非確認してみてください。