工程管理研究所
いとう君が日々の残業から抜け出すために工夫した結果、製造工程の大幅な改善に結び付き、最終的にコスト・リードタイムともに半分近くまで削減していく汗と涙の青春物語!
前回はいとう君の職場の現状を紹介しました。
登場人物紹介
いとう君
目黒製作所の生産統括課で、新人教育や業務改善、作業の進捗管理をしている新米班長。努力と根性で様々なトラブルを解決してきたものの、そろそろ根本的な業務効率化を進めたいと頭を悩ます27歳。
齊藤さん
いとう君の親友。いとう君は彼女だと思っている。システム開発会社勤務。行動力と実行力に長けている。いとう君は、彼女が具体的にどのような仕事をしているのか実は理解していない。
鈴木さん
いとう君の上司。設備機器事業本部 圧力容器製造部 生産統括課課長。面倒見は良いが社内では製造現場が強いため、社内的にはどこか頼りないと思われている。
佐藤さん
目黒製作所の設備機器事業本部 圧力容器製造部 生産統括課試験課課長。声が大きく、強面だが、意外と、丁寧に現場の作業内容を教えてくれる。
田中さん
目黒製作所の設備機器事業本部 圧力容器製造部 生産統括課製缶課課長。製造現場のリーダー的な存在。
守衛さん
目黒製作所の守衛。いとう君が残業が多いため、退勤時になにかと声を掛けられ、顔見知り。
高橋君
設備機器事業本部 バルブ製造部工務課。いとう君の同期。生産管理担当。
あらすじ
結局、彼女との待合せをすっぽかしてしまい、今日は昨日の対応で朝早くから現場の各課長へ作業予定を提示して回ります。
現場で進捗の確認、現物の確認を行っているさなか再度設計変更が発生。
また計画の作り直しです。
何時までもこのままの仕事のやり方ではいけないと思い、先ずは生産管理の基礎を学ぼうと思案を巡らします。
#2 しれんは続く
昨日のどたばたから結局深夜までの作業になり、しかも彼女には「いつも約束守れないじゃない。そんな仕事あるの?ほんとは仕事じゃないんじゃないの」と言われ、疲れていたので反論もせずに謝り続けました。
朝起きたら「もうちょっとちゃんと説明すればよかったな」と思いましたが、昨日作成した作業予定表がかなりの予定変更を余儀なくされ、納期余裕があったオーダもぎりぎりの状態です。
これをまた現場の課長に見せて「こんな予定で大丈夫か?こんな予定できるのか?」などと攻撃される姿が脳裏に浮かび、今朝は始業時間前に出社し、工場内の現場主任の机に、先に、昨日作り直した作業予定表を置いてまわる予定です。
朝、守衛さんに、

守衛さん
いとう君、今日は早いねー、またトラブル?
と言われ、
いいえ、O社の仕様変更対応です。
現場の課長さんがうるさいので、怒られる前に今日は先に予定表を机の上に置いてまわろうと思ってます。

いとう君
とつげ、

守衛さん
あそこは大変だからなー、でもがんばれよ!
と励まされ、ちょっと気を取り直し、昨日印刷した作業予定表を班長の机に置いてまわります。
一巡して、だれもいない現場事務所の自販機で缶コーヒーを買い、ちょっと休憩です。
時計は7時45分。
そろそろ作業者が出勤してくるはずです。
試験課の課長が来ました。

佐藤さん
おー、いとう、早いなー。
予定できたのか。
はい、机の上に。

いとう君

佐藤さん
そうか。
俺より早く来るとは、だんだん仕事がわかってきたな。
はい。

いとう君

佐藤さん
ところで、若いんだからいつまでも現場を歩いて作業の進捗の確認なんてしないで、頭使って便利な道具作れよ。

佐藤さん
俺は若いときに、そこの黒板に予定を書いて、現場の班長に仕掛かったら斜線を書いてもらって、完了したら塗りつぶしてもらってたんだけどな。
まーあのころは、今の数倍の時間かけてもの作ってたからなー。
それにこんなに部品無かったしなー。
こー、ものが複雑になってきたら、現場も、今日やった作業を黒板の一覧から探して塗りつぶしていくなんてことお願いしたら怒るだろうな!
まー俺だったらやらないな。
さて、予定見るか。
とちょっと機嫌がいいみたいだ。
自分の机にもどり、昨日朝書きかけだった新人教育用の作業要領書を書き始めました。
そこにまた試験課の課長が怪訝そうな顔をして現れ、手には私が作成した作業予定表を持っています。

佐藤さん
課長よ、このいとう君が作った予定だと、納期ぎりぎりのものがあるし、すぐに仕掛からなくてもよさそうな納期のものを先につくることになるけど、だけど俺だったらこっちを先にやるけどな。
なんせ工期が長いので余裕を持って作業したいし、こっちの小さいのはぎりぎりに作っても間に合うので。
どうする?
と試験課の課長は私の方を見ずに話をしているが、「いままでそんなこと教えてくれなかったのに」と思い。
そうかー、わかりました。
すぐ作り直します。

いとう君

鈴木さん
よし、いとう君やってくれ。
すぐに直しますので、その間の作業はお任せしていいですか。
わかった、たのむよ。

佐藤さん
と、ちらっと私の顔を見て、試験課の課長は事務所を出て行きました。
しまったー。
もしかして、今日も残業かもと。
自分で調子のいいこと言っておきながら、ちょっと後悔しはじめました。
昨日さんざんやったので、まだ頭の中に昨日日程調整した各オーダの工期やリードタイムが記憶にあります。
いま言われたことはなんとなく頭の中では整理できるのですが、これを表計算ソフトにバーチャートで記載していくのに時間がかかります。
最初にボトルネックになる大型機械加工の職場の日程を引き、そこから各オーダごとの日程も交互に修正していきます。
「あー、条件入れたら自動的に日程表ができるといいのになー」と思いつつ、オーダごと、作業ごとに、作業の前後関係と納期や設備の重複がないか確認しながら日程表を仕上げていきます。
でも、さすがに昨日やったので今日は調子がいいようです。
このペースなら昼過ぎには終わりそうです。

いとう君
課長、昼過ぎには終わりそうですよ。
昨日やったものの修正なので、意外と早くできそうです。
そうか、たのむよ。
俺は手書きだったからなー。
いとう君が表計算ソフトで作るようになってから、現場の受けもいいしな。
今日は定時に帰って、夕飯ごちそうするか。
予定あるか?

佐藤さん

いとう君
いえ、予定はないです。
ごちそうになります。
といいつつ、「昨日は予定があったのに」と彼女との昨日の気まずい電話を思い出し、「しまった、今日は彼女に昨日の穴埋めのフォローでもしておくべきだったかなー」と思ったが、また後の祭り。
どちらにしろ、夕方電話しなくては。
時計を見て、あとちょっとで昼休みだ。
なんだか昼前には終わりそうかも。
と席を立ち、コーヒーでも飲みに行こうと思った瞬間、また電話がなっています。
ここにくる電話はすべてトラブルを運んできます。
手配したものが遅れそうとか、現場の機械が故障したとか、納期を早めてくれとか?はては、ワークをおしゃかにしたとか。
「課長、製缶課課長から電話です」と声が聞こえ、課長が電話を取ります。

鈴木さん
えー、だめだろー、そんな。
昨日も設変で大変だったのに、なんとかなんないのか?
そうかー、あそこのものはしょうがないなー。
ちょっと、いとう君今忙しいので、午後になったら現場に行かせるから。
と電話を切るなり、

鈴木さん
またトラブルだ。
今度は溶接ミスで、検査から戻ってきたものを、ばらして再加工してまた製缶するんだが、例の大物なんだよ。
こいつを製缶に戻すのは場所が無いので、やっかいだな。
そっちの日程表もまた書き直しだなー。
よし、しょうがないが、昨日の日程表もっていまから営業部にいくぞ。
ということで、課長と一緒に営業部に行き、昨日の日程表を見せながら納期調整できそうなものを営業部の部長に確認します。
結局、昨日の仕様変更になったO社のオーダを、仕様変更対応を理由に遅らせることにしました。
さて、また現場にでて、昨日と同様に、こんどは溶接ミスしたオーダの各部品の進捗を確認します。
今日は、課長も一緒です。
なにせ部品点数が多く、サブユニット、ユニット、製品となん階層もの子部品の加工があります。
また、昨日と同様に、仕掛かり中の部品がどこまで進んでいるのか、現場を這いづりまわります。
あれ、もしかして、今日も残業かも。
部品を探しながら、朝、試験課の課長が言っていた進捗の管理方法が気になり出しました。
いまどき黒板に記載していくなんて原始的なことでは、この多量の仕掛かり品に太刀打ちできそうもありません。
そういえば規格品を作っている職場では、現品表にバーコードがついていたなー。
明日にでも、どんな仕組みなのか聞きにいってみるか?
ということで、いとう君の目覚めは近い。
つづく!
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