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新米班長 いとう君 第13話 進捗管理(実績ではなく、進捗が大事)

いとう君が日々の残業から抜け出すために工夫した結果、製造工程の大幅な改善に結び付き、最終的にコスト・リードタイムともに半分近くまで削減していく汗と涙の青春物語!

前回は佐藤課長と田中課長の協力で、ヒアリングの約束をさせてもらいました。

→第12話「スケジューリング」はこちら

登場人物紹介

  • いとう君
    いとう君

    目黒製作所の生産統括課で、新人教育や業務改善、作業の進捗管理をしている新米班長。努力と根性で様々なトラブルを解決してきたものの、そろそろ根本的な業務効率化を進めたいと頭を悩ます27歳。

  • 斉藤さん
    齊藤さん

    いとう君の親友。いとう君は彼女だと思っている。システム開発会社勤務。行動力と実行力に長けている。いとう君は、彼女が具体的にどのような仕事をしているのか実は理解していない。

  • 鈴木さん
    鈴木さん

    いとう君の上司。設備機器事業本部 圧力容器製造部 生産統括課課長。面倒見は良いが社内では製造現場が強いため、社内的にはどこか頼りないと思われている。

  • 佐藤さん
    佐藤さん

    目黒製作所の設備機器事業本部 圧力容器製造部 生産統括課試験課課長。声が大きく、強面だが、意外と、丁寧に現場の作業内容を教えてくれる。

  • 田中さん
    田中さん

    目黒製作所の設備機器事業本部 圧力容器製造部 生産統括課製缶課課長。製造現場のリーダー的な存在。

  • 守衛さん
    守衛さん

    目黒製作所の守衛。いとう君が残業が多いため、退勤時になにかと声を掛けられ、顔見知り。

  • 高橋君
    高橋君

    設備機器事業本部 バルブ製造部工務課。いとう君の同期。生産管理担当。

あらすじ

佐藤課長と田中課長から、「電子チェックシート」という形で現場の実績を収集するアイデアと協力を得た「いとう君」。意気揚々と彼女(齊藤さん)に報告しますが、そこでまたしても鋭い指摘を受けることになります。進捗管理の本当の目的とは何なのでしょうか。

#13 進捗管理(実績ではなく、進捗が大事)

鈴木さん

鈴木さん

おはよう。

おはようございます。
さっそくですが、昨日の続きで、今日は、製缶課の田中課長のところに行って、実績入力のヒントをもらいに行って来ます。

いとう君

いとう君

鈴木さん

鈴木さん

いいよ。
仕事の邪魔にならないように、あと、田中さんにお礼も言ってきなさい。

了解です。
行ってきます。

いとう君

いとう君

さっそく、製缶課へ向かいます。

ちょうど、KY(危険予知活動)を実施中でした。
各グループが、本日の作業内容の確認と、安全確認を実施し、号令をかけています。
その内容を聞きながら、待ちます。

田中さんが、終了と同時にこちらに向かってきました。

いとう君

いとう君

田中課長、おはようございます。
今日はよろしくお願いします。

おはよう。
まずは、あそこで溶接棒のチェックをしているので、横で見ていればいいよ。

田中さん

田中さん

いとう君

いとう君

はい、ありがとうございます。

今、携帯乾燥機から取り出した溶接棒を記録するために、自分が熔接する部位と、溶接棒のロットNoを熔接管理シートに記載したんだ。
作業後、作業終了時刻と使用した溶接棒のロットNoを再度確認して、チェックを付けて、一連の作業は終了だよ。

田中さん

田中さん

いとう君

いとう君

毎日何枚ぐらい書くのですか?

そうだな、各自、数十枚は書いてるな。

田中さん

田中さん

いとう君

いとう君

あの紙が電子化されて、作業開始前の記録と、作業終了後のチェック確認が自動的に記録できれば、作業者がどのような作業を何時間したかの実績がわかりますね。

まあ、そういうことだ。
そのほかにも、そもそも朝のKYで治具の準備やものの移動なんかも、時間単位に誰が何をするのかKYシートに書いているから、この内容に、後はチェックだけするような仕組みで自動的に実績が収集できれば、熔接以外の作業もたいていは記録できるぞ。

田中さん

田中さん

いとう君

いとう君

田中課長、この熔接記録シートと、KYシートのコピーをもらえますか?

あーいいよ。
昨日のやつがあるから、今から現場事務所に行って、内容見て、好きなのをコピーしていっていいよ。

田中さん

田中さん

いとう君

いとう君

ありがとうございます。

次は、試験課の現場事務所へ向かいます。

いとう君

いとう君

佐藤課長、おはようございます。
今、製缶課で田中課長に、熔接のチェックシートやKY時の予定表を見せてもらいました。

おはよう。
じゃあ、さっそく検査報告書や品質チェックシートの説明をするか。

佐藤さん

佐藤さん

いとう君

いとう君

はい、宜しくお願いします。

先ずは、これが、検査報告書。

佐藤さん

佐藤さん

いとう君

いとう君

はい、いつも見てますが、どうやって書いているのか知りませんでした。
すみません。

検査報告書は、ひな形があって、これを印刷してだな。
…おっと、印刷する前にな。
今日検査する製番や部品がわかっているから、この欄に、製番と部品番号を入力してから印刷するんだ。
よし、現場行くか。

佐藤さん

佐藤さん

いとう君

いとう君

はい。
宜しくお願いします。

あそこで、MTやっているから見に行こう。
部位によって、MTっていう磁粉探傷や超音波、X線とガンマ線(γ線)などで、非破壊検査をするんだが、その結果をここに記載して…まあ、作業者や時刻とかもな。

佐藤さん

佐藤さん

いとう君

いとう君

これも、電子化できると、実績報告要らなくなりますね。

まあそういうことだ。
あとは、こっちの品質チェックシートな。
これも、作業者と測定結果を都度都度書き込んでいくんだよ。
必ず、「誰が、何時」の情報が書いてあるので、ここから拾ってくれれば実績はわかると思うぞ。

佐藤さん

佐藤さん

いとう君

いとう君

そうですね。
開始した時刻とチェックした時刻があるので、実績時間がわかりますね。

これが、画面とかでぽちぽちクリックするだけになったら、みんな喜ぶと思うけどな。

佐藤さん

佐藤さん

いとう君

いとう君

そうですね。勉強になりました。
さっそく考えてみます。
また、具体的な案ができたら、相談に来ます。

予算にもよると思うけど、期待して待っているよ。

佐藤さん

佐藤さん

いとう君

いとう君

はい。
今日は、ありがとうございました。

今日は、納期変更も設計変更も無いので定時で上がれそうです。
さっそく、彼女に電話して、夕飯の約束をしました。

いとう君

いとう君

聞いてよ!
現場の佐藤課長と田中課長から、品質検査や溶接のチェックシートをタブレットで電子化して、そこから作業の『着手』と『完了』の時間を自動で拾うっていうアイデアをもらったんだ。 これで、現場に負担をかけずに実績データが集められそうなんだよ!

おー、すごい進歩じゃない!
現場の人たちを巻き込んで解決策を出すなんて、いとう君もすっかり立派な班長だね。

齊藤さん

齊藤さん

彼女が笑顔で褒めてくれたので、思わず胸を張りました。

いとう君

いとう君

だろ?これで、誰が、いつ、どれだけ作業したかという『過去の実績』がバッチリ蓄積できる。
それを予定と突き合わせて予実管理すれば、完璧な工程管理ができるはずだよ!

ところが、私のその言葉を聞いた瞬間、彼女の笑顔が少しだけ悪戯っぽく変わりました。

うーん……60点かな。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

えっ、なんで?
実績をしっかり集めるのが大事だって、前にも言ってたじゃないか。

もちろん実績を収集する仕組みは素晴らしいわ。
でもね、いとう君。
工程管理において一番大事なのは『実績』を集めることそのものじゃないのよ。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

実績じゃないなら、何が大事なの?

進捗管理の本当の目的は、『この仕事はいつ終わるのか』を予測して、コントロールすることよ。
つまり、見るべきは『過去』ではなく『未来』なの

齊藤さん

齊藤さん

彼女はグラスを置いて、真剣なトーンで説明を始めました。

たとえば、いとう君が知らない街でタクシーに乗っているとするでしょ。
目的地まであとどれくらいで着くか知りたいとき、運転手さん横の『料金メーター』を見つめていても意味がないよね?
料金メーターが示しているのは、『過去に走った距離や費やした時間(実績)』に過ぎないんだから。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

あっ、たしかに……知りたいのは『あと何分で着くか』だよね。

そう、仕事も同じよ。
たとえば、10日分の工数を見込んだ作業があったとして、今日で5日目だから『進捗率50%です』って報告するのは、単なる『時間の消化率(実績)』であって、本当の『進捗』とは言えないの。
もし途中でトラブルがあって、完了までにあと8日かかる状況になっていたとしたら、残りの日数をベースにリスケジュールしなきゃいけないでしょ?

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

あ……!
だから前に、『現場の作業者に残工数(あとどれくらいで終わるか)を入力してもらうのが理想だ』って言っていたのか!

目から鱗が落ちる思いでした。
実績(ログ)を集めるシステムを作ることばかりに気を取られ、「それをどうやって納期遵守(コントロール)に活かすか」という一番大事な視点が抜け落ちていたのです。

いとう君

いとう君

そうか……。
ただ『終わりました』っていう実績だけを集めても、今仕掛かり中の作業がいつ終わるかわからなければ、次の工程の予定も立てられないし、納期に間に合うかどうかの判断もできないんだね。

そういうこと。
もちろん、過去の実績データを蓄積することは、後で作業の標準化や生産性を分析する(カイゼンの参考にする)ためにはとても重要よ。
でも、日々の現場を回すための進捗管理においては、『実績』よりも『残りの進捗(未来)』をいかに早く正確に共有できるかが勝負になるの。

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

ありがとう。
明日、さっそく現場の課長たちとチェックシートの電子化について話すときに、『着手・完了の記録』に加えて、『明日も続く作業の場合は、あと何時間くらいで終わりそうか(残工数)も簡単に入力できる仕組み』にできないか相談してみるよ!

うん、その意気よ!
トラブルが起きたときに『まだ終わりません!』って後から言われるより、『あと何時間かかります』ってタイムリーに教えてもらう方が、いとう君も前もって他の作業を組み替えたり、応援を呼んだりできるでしょ?

齊藤さん

齊藤さん

いとう君

いとう君

まさにそうだね。
現場がもっと楽に、ドタバタせずに仕事ができる仕組みに一歩近づけそうな気がしてきたよ。

残っていたビールをぐっと飲み干しました。 やるべきことがさらに明確に、そして研ぎ澄まされていくのを感じていました。

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