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  • 業務改善
  • 2024.12.3

ジャストインタイムとは?メリット・デメリット、向いている企業を解説

ジャストインタイム(JIT)は、必要なものを必要なときに、必要な分だけ生産することで、在庫の最小化やコスト削減を図る生産方式です。

トヨタ自動車が確立した手法であり、現在も多くの製造業で採用されています。

本記事では、ジャストインタイムの概要やメリット・デメリット、この方式が向いている企業について解説します。

ジャストインタイム(JIT)とは?

まずはジャストインタイムの概要と三原則、かんばん方式との違いについて解説します。

ジャストインタイムの概要

ジャストインタイムとは、必要なモノを、必要な時に、必要な分だけ生産する生産方式です。

「自働化」と並ぶトヨタ生産方式の2本柱の1つで、在庫の最小化と生産効率の最大化を目指します。

供給者側の都合を優先せず、顧客のニーズに応じて生産するという考えのもと、生産停滞や過剰在庫を防ぎ、効率的にモノを流すことが目標です。

世界的に広く認知されている生産方式で、多くの製造業で採用されています。

ジャストインタイムの三原則

ジャストインタイムは、平準化(生産量や生産性の均一化)することを大前提に、「後工程引取り」「工程の流れ化」「タクトタイム」の三原則で構成されています。

それぞれの内容は以下の通りです。

後工程引取り

後工程が「必要なモノを、必要な時に、必要な分だけ」前工程から引き取ることを指し、前工程は後工程に引き取られた分だけを生産します。

顧客のニーズに応じた柔軟な生産が可能となり、ムダな在庫の削減につながります。

工程の流れ化

生産工程の各ステップをスムーズに繋ぎ、停滞や後戻りがないようにします。

各工程の生産タイミングを均一化し、サイクルタイムのばらつきをなくすことが目標です。

理想的には、すべての工程がライン生産のように、最初の工程から最後の工程まで製品を1個ずつ連続して流すことが望ましくあります。

しかし、全ての工程を同じタイミングで流すのは容易ではありません。

そのため、工程間の停滞やタクトタイムのばらつきを抑え、動作や作業のムダを削減することで、各工程が効率よく次の工程へ流れるようにし、生産効率の向上を目指します。

タクトタイム

タクトタイムとは、1つの製品を作るのにかかる時間を指す、生産ライン全体のペースを決定する指標です。これは、注文量に基づいて最適に調整されるべきものです。

フォード生産方式のように1つの部品や製品のみを大量に生産するわけではなく、多くの工場では様々な部品や製品を製造する「多品種少量生産」が求められます。

そのため、各製品や部品のタクトタイムをなるべく均一にすることが重要です。

これを実現するために、段取り時間を短縮し、「ムリ」や「ムダ」を省いて効率的な生産を目指します。

この三原則により、生産における無駄を徹底的に削減し、効率的な生産活動を実現します。

かんばん方式との違い

ジャストインタイムは生産のあり方や全体的な考え方を指すものであり、かんばん方式はジャストインタイムを実現するために行う手法の1つです。

かんばん方式では、「かんばん(看板)」と呼ばれるカードや信号を使い、各工程でどれだけの部品や製品を生産・供給するかを管理します。

かんばん方式は、工程間の情報伝達手段として使われ、前工程に「必要な部品の種類や数量」を指示する仕組みです。

このように、ジャストインタイムが生産における概念であるのに対し、かんばん方式は具体的な手法であるという点が異なります。

ジャストインタイム導入のメリット

続いて、ジャストインタイム導入のメリットである以下の3点について、解説します。

  • 在庫削減
  • コスト削減
  • リードタイム短縮

在庫削減

ジャストインタイムを導入することで、在庫削減が実現できます。

ジャストインタイムは「必要なときに必要な分だけ」生産するため、過剰在庫が発生しません。

また、製品が古くなる前に出荷できるため、経年劣化による品質の低下を防ぎやすくなります。

さらに、大量の在庫を抱えずに済むため、倉庫にかかるスペースの確保が不要になり、空いたスペースで新たな製品の生産を開始できます。

このようにジャストインタイムは、在庫を適切に管理し、生産効率を高められることが大きなメリットです。

コスト削減

ジャストインタイムの導入により、過剰生産や在庫管理業務を排除することで、コスト削減が可能です。

まず、必要な分だけを生産するため、過剰生産が発生せず、不要な製品の廃棄コストを削減できます。

次に、大量の在庫を持たなくて済むため、在庫管理にかかる人件費や管理費、光熱費が抑えられ、さらに保管スペースや倉庫維持にかかる固定費も減少します。

さらに、効率的な生産と簡素化された在庫管理によって、必要な人員が減少するため、人件費の削減も期待できます。

このように、ジャストインタイムは生産から在庫管理まで全体のコストを抑え、財務の健全化に大きく貢献する生産方式です。

リードタイム短縮

ジャストインタイム生産方式は、工程の流れをスムーズにし、無駄を排除することで、リードタイムの大幅な短縮を実現します。

まず、工程の流れ化により、製品が効率的に次の工程へ進むため、1つの製品を完成させるまでの時間が短縮されます。

次に、無駄な作業や過剰な在庫を持たないことで、工程間の遅延が減り、生産から納品までのリードタイムが縮まります。

さらに、ジャストインタイムはBTO(Build to Order)のように、顧客の要求に応じて迅速に製品を提供する柔軟性を持っており、長期間顧客を待たせることが少なくなります。

ジャストインタイムによるリードタイム短縮は、迅速な市場投入や顧客満足度の向上に大きく貢献するといえます。

ジャストインタイム導入のデメリット

一方で、ジャストインタイムの導入には、いくつかのデメリットがあります。

高い導入コスト

ジャストインタイムを効果的に運用するためには、高額な導入コストが発生します。

まず、生産ラインの平準化が求められるため、工程間での連携体制を整備する必要があります。このため、かんばん方式のシステム導入や専用設備の購入など、大規模な投資が必要です。特に、すべての工程を1個流しできるようにするには、高度な専用設備が必要になる場合も多く、現実的には導入が難しいケースがあります。

さらに、必要な分だけを都度生産して配送するため、配送回数の増加による配送コストの増加も避けられません。これに加え、生産現場の環境整備や新しい機材の導入など、さまざまな準備コストがかかるため、初期投資が大きな負担となります。

在庫切れリスク

ジャストインタイムにおける最大のリスクは、在庫切れによる生産停止リスクだと考えられます。

まず、自然災害やサプライヤーの納品遅延が発生した場合、在庫を最小限にしているため、生産が停止してしまうリスクが高まります。

次に、急な受注量の増加や市場の変動があった場合、在庫が不足しているため迅速に対応できず、機会損失や顧客からの信頼低下につながることがあります。

さらに、下請け企業の負担増も重要な問題です。下請け企業が急な発注量の変動に対応できない場合、納期遅延や品質低下のリスクが生じる可能性が高まります。

協力企業と円滑に連携するためには、数か月先の発注内示や発注量の調整を定期的に共有するなどの取り組みが必要です。

しかし、これには協力企業の理解と協力が不可欠であり、全体のサプライチェーン管理が複雑化する可能性があります。

ジャストインタイム生産方式を成功させるには、これらのリスクを管理し、安定した供給体制を維持することが必要不可欠です。

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ジャストインタイムが向いている企業

ジャストインタイムが向いているのは、以下のような特徴を持つ企業です。

  • 需要が安定している
  • 供給チェーンが安定している

需要が安定している

ジャストインタイム生産方式が向いている企業は、需要が安定している企業です。

需要が一定していることで生産計画を立てやすく、必要な材料や部品の供給を適切に調整できるため、在庫を最小限に抑えられます。

また、需要が急激に増減しないことで、生産と供給のバランスが取りやすくなります。その結果、効率的な生産を継続的に行えるため、企業全体の生産性が向上します。

需要が安定している企業は、ジャストインタイム生産方式の導入により、在庫管理や生産効率の面で大きなメリットがあるといえます。

供給チェーンが安定している

供給チェーンが安定している企業も、ジャストインタイム方式が向いています。

材料や部品の供給が遅れるリスクが少ないため、在庫を最小限にしても生産に支障をきたしません。必要なタイミングで正確に材料を調達できることで、スムーズな生産が可能です。

さらに、災害など外部要因による生産中断のリスクが少ないことも重要です。

このような企業では、供給量の予測がしやすく、効率的な生産計画の立案・実行が可能です。

まとめ

ジャストインタイムは、ニンベンの付いた自働化と並び、トヨタ生産方式の二本柱となっています。

ムリ・ムラ・ムダを顕在化し、改善(Kaizen)を通じて、より良い品質・より低いコスト・より短いリードタイムを実現するための手法です。

そのため、たとえジャストインタイム方式の生産が向いていない企業であっても、工程の流れ化やタクトタイムの最適化などの改善手法はきっと役に立つはずです。

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