工程管理研究所
いとう君が日々の残業から抜け出すために工夫した結果、製造工程の大幅な改善に結び付き、最終的にコスト・リードタイムともに半分近くまで削減していく汗と涙の青春物語!
前回はガントチャートについて齊藤さんから色々と教えてもらいました。
登場人物紹介
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いとう君
目黒製作所の生産統括課で、新人教育や業務改善、作業の進捗管理をしている新米班長。努力と根性で様々なトラブルを解決してきたものの、そろそろ根本的な業務効率化を進めたいと頭を悩ます27歳。
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齊藤さん
いとう君の親友。いとう君は彼女だと思っている。システム開発会社勤務。行動力と実行力に長けている。いとう君は、彼女が具体的にどのような仕事をしているのか実は理解していない。
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鈴木さん
いとう君の上司。設備機器事業本部 圧力容器製造部 生産統括課課長。面倒見は良いが社内では製造現場が強いため、社内的にはどこか頼りないと思われている。
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佐藤さん
目黒製作所の設備機器事業本部 圧力容器製造部 生産統括課試験課課長。声が大きく、強面だが、意外と、丁寧に現場の作業内容を教えてくれる。
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田中さん
目黒製作所の設備機器事業本部 圧力容器製造部 生産統括課製缶課課長。製造現場のリーダー的な存在。
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守衛さん
目黒製作所の守衛。いとう君が残業が多いため、退勤時になにかと声を掛けられ、顔見知り。
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高橋君
設備機器事業本部 バルブ製造部工務課。いとう君の同期。生産管理担当。
あらすじ
ガントチャートやパートチャートの本質とか、工程管理やプロジェクト管理とExcelで書いた線表の違いを教えてもらいます。
#8 工程管理とかプロジェクト管理とかの入門
彼女の講義は、続きます。
齊藤さん
見栄えのいい帳票とシステム化は全く別物でしょ。
まあ、そうだよね。
いとう君
齊藤さん
取り敢えず、Excelは忘れてもらって、目的を整理しよ!
そうだね。
いとう君
齊藤さん
では、目的は?
はい、工程管理をしたいかな。
いとう君
齊藤さん
ちょっと違うかな。
え~。
分からないよ。
いとう君
齊藤さん
目的だからね。
工程管理が何かも分からないのに、工程管理が目的なんておかしいでしょ。
まあ、わざと嫌な言い方したけど。
これは私のお客様にもこう言うの。
まあ、そうだね。
じゃあ、目的は、「計画変更時の再計画をタイムリーに行いたい。そのために、作業がどこまで進んでいるのかもタイムリーに把握したい」かな。
いとう君
齊藤さん
だいたいいいね。
ねぇ、そうすると、さっきのExcelのガントチャートなんてどうでも良くなったでしょ。
うん、だまされたみたいだけど。
確かにその通りだね。
いとう君
齊藤さん
でしょ。
では、まずは「作業がどこまで進んでいるかをタイムリーに把握したい」が最初の課題だね。
ポイントは、できることからやっていくのよ。
そのできることが、煩わしかったり、ミスや誤記が多いとか十分にタイムリーじゃない場合に、その問題を一つずつ潰していくの。
これが、カイゼンね。
その行き着く先にあるのが、いま流行のDXとかのシステムに置き換わっていくのよ!
お~!なんかここ何日かの講義で、一番ひびいたぞ!
齊藤さん
この手順をすっぽかして、見える化だとかシステム化だとか言っているから失敗したり、効果が得られなかったり。
本屋さんで買える本も、怪しい本ばっかりで、じゃあどうすんの?
ってことが書いてないでしょ。
確かにね。
工程管理のシステムでできる機能が記載されていたり、ガントチャートがこんなに見やすいとか書いてあったけど。
具体的にどうしていけば良いのかは書いてないよね。
いとう君
齊藤さん
でしょ。
そんな大事なことが本屋さんで買えれば、コンサルタントとか、システム屋さん達の仕事がなくなるでしょ。
そうだよね。
いや、なんか酒が進むね。
いとう君
齊藤さん
はあ、話を聞いているの?
いや、感動したので、ということで。
賞賛です!
いとう君
齊藤さん
ありがと。
では、私も飲みながらなんで、調子が乗ってきたけど。
こんなに私の話を聞いてくれる人がそばにいたなんてね。
さて、作業が「どこまで進んでいるのかもタイムリーに把握したい」を解決するために、「進捗管理」って言ってたよね。
進捗って、物事が捗る(はかどる)事だから、「進捗してます」ということは順調ということなんだけど、順調に捗らないから管理するって変な日本語なんだけど。
生産管理や工程管理など「管理」という日本語だと意味が通じない言葉がたくさんあることを最近知ったんだけどね。
まあ、まずは「見える化」でしょ。
「見える化」ってトヨタ自動車さんが発明した言葉だけど。
そう言えば、この前名古屋でトヨタ博物館に行ったのよ。
そこで、とっても良い本を買ってきたの。
もう読んだから今度貸してあげるね。
「英語でkaizen!トヨタ生産方式」って本なんだけどね。
たぶん、海外の工場で「なぜカイゼンが必要なのか?なにをコントロールしたいのか」が英語と日本語でやさしく説明してある隠れた名著なんだって。
見える化は、何が問題かを把握して、無理、ムダとかの解決しなければならない問題を明確にして行くんだけれど。
進捗状態を「見える化」するということは、問題を明確にすると言うことなのよ。
前に言ったと思うけど、昔の価値観で設備稼働率とか意識すると、設備が空いていると計画と違う作業を実施したりね。
計画通りにやってもらわないと後工程も影響するし、なにが正常でなにが異常かも分からなくなるでしょ。
その結果で計画の差し替え、いわゆる再計画も発生するしね。
つまり、何が正常であるかの基準がいるのよ。
それで、順序計画が必須なの。
順序計画っていう言い方はとても大事な側面があって、計画した作業順番を守って欲しいのね。
話の途中から、「進捗管理なんて言ってちょっと失敗したな」と思ってたんだよ。
やっぱり計画が必要と言うことだよね。
いとう君
齊藤さん
当たり前でしょ!
「遅れた、進んだ」は、基準があるから分かることで、基準がなければ遅れたか進んだかなんて判断できないでしょ?
だからまずは、計画表を作るのよ。
さっきのExcelで作ったガントチャートなんていらないから。
あれはオーダー別ガントチャートなので、製造現場の人には不要なの。
製造現場では、「今日は、朝から、どういう順番でなんの作業をするのか」が分かれば良いんでしょ?
それは現場単位なのか職場単位なのか、いわゆるリソースごとのリストの様な一覧で良いのよ。
ガントチャート、特にオーダー別ガントチャートは、オーダーごとの進捗状況や納期余裕とか優先順を把握し調整するために必要なもので、製造現場にはいらないと思うけどね。
ごめん、オーダーごとのガントチャートが見たいって言われたんだよね。
いとう君
齊藤さん
なんで、
なんで、必要なの?
って、ちゃんと聞いた?
ごめん、聞いてない。
たぶん、そのガントチャートを見ながら、今日やる作業を決めていたんだと思う。
いとう君
齊藤さん
よくある話だね。
いや、私が会社で良く聞く話だなあと思ってね。
つまり、製造現場で作業順番を決めているんでしょ。
つまり、だれもコントロールしていない状態。
管理とか以前の問題。
まあ、工場での言い方は「現場に任せてあります」って言うんだけどね。
そうだね。
そのために、工程管理しますって言ったので。
いとう君
齊藤さん
では、まずは、パートチャートを作りましょう!
さっき見せてもらったガントチャートだけど、1オーダーが1本の行というかバーだったけど、部品が多くて現場で探すのが大変とか、組立時にはその部品が揃ってないといけないんでしょう。
ということは、全ての子部品を含むパートチャートが必要だよ。
作業の手順やこの作業とこの作業ができたら、この組立が開始できるとかの作業順番の制約を表現するの。
そして、そこに必要となる作業時間と必要となるリソース情報を記載して、パート(PERT)図っていってね。
パートにはアローダイアグラム図やネットワーク図とか色々あってね、ネットでもいい加減なことが書いているので、あまりあてにしないでね。
アローダイアグラム図は難しいので、先ずはネットワーク図で、矩形(くけい)のマスを左から右へ横に並べて作業と作業の間に矢印を引いて、マスに工数、つまり作業時間を記載すればOKかな。
で、ネットワーク図を書くためには、部品構成や作業を分解する必要があるんだけど。
WBSって言ってね、作業を分解して、いわゆるツリー構造で表現していくんだけど。
ポイントがあって、作業を詳細に分割するんだけど、ワークというか、部品とかのリソース、作業者や設備が変わる単位で作業として記載しないと、段取りして、本作業して、また段取りして、とかね。
作業が細分化されすぎても困るでしょ。
あと、逆もあって、組立5日とかで一つの作業にしてしまうと、着手してからの進み具合、進捗が分かりずらいでしょ。
作業の途中の状態も重要なの。
数時間で完了する仕事なら問題ないけど、何日もかかる仕事が、終了予定日になってから急に「まだ半分しか終わってません」って言われてもね。
結構、難しそうだね。
いとう君
齊藤さん
大丈夫よ。
週末に勉強会開いてあげるよ。
え、ほんと!
いとう君
齊藤さん
さっきの本とか資料を持って、家に行ってあげる!
あ、ありがとう。
いとう君
あれ、急にドキドキしてきた。
あー、掃除しなきゃ!洗濯も。
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